
この記事でわかること:医療・福祉機器の取っ手・ハンドルに求められる4つの条件/握りやすいパイプ径の目安早見表/パイプ曲げと板金を組み合わせるフレーム構造の実務ポイント/溶接焼けの処理と衛生面の考え方。医療機器・福祉機器・介護用品の開発、リハビリ機器や搬送カートの製作に関わる方に向けて、加工現場からまとめました。
今回は、医療・福祉機器に組み込まれる取っ手フレーム(パイプハンドル)の製作事例をご紹介します。曲げ加工したパイプに板金カバーを溶接で組み合わせた構造で、当社の得意分野である「パイプ曲げ加工」と「板金加工」の両方が活きる製品です。写真は溶接直後の製作途中の様子で、パイプと板金の接合部に溶接の焼け色が見えています。この後の仕上げ工程で焼けを除去し、滑らかで清潔感のある状態に仕上げていきます。
医療・福祉機器の取っ手に求められる4つの条件
取っ手は「握れれば良い」部品ではありません。医療・福祉の現場で使われるからこそ、次の条件が同時に求められます。
- 安全性:バリ・エッジ・溶接の凹凸がないこと。体重を預けても壊れない強度と溶接品質
- 握りやすさ:手の大きさや握力が低下した方でも保持しやすい径と曲げ形状
- 衛生・清掃性:消毒液での清拭に耐える材質と、汚れが溜まらない滑らかな接合部
- 軽さと剛性の両立:介助者・利用者の負担にならない軽さで、たわみ・ガタつきがないこと
握りやすいパイプ径の目安早見表
取っ手のご相談でまず決めるのがパイプ径です。当社が実務で目安にしている使い分けをまとめました(用途・使用者によって最適値は変わります)。
| パイプ径 | 主な用途の目安 | ポイント |
|---|---|---|
| φ19mm前後 | 機器の操作ハンドル、小型カートの取っ手 | 軽く、指を回して握り込みやすい。強度は肉厚で調整 |
| φ22〜25.4mm | 搬送カート、医療機器の押し手・引き手 | 機器ハンドルの標準的な選択肢。手袋着用時も扱いやすい |
| φ28〜32mm | 体重を預ける手すり・支持バー | 手のひら全体で支えやすい。福祉用手すりの定番領域 |
「誰が・どの姿勢で・どのくらいの力で使うか」で最適な径と曲げ形状は変わります。試作段階で実際に握って確認できるのが、1個から製作できる当社の強みです。
本事例のポイント:パイプ曲げ×板金の複合構造
- パイプベンダーによる曲げ加工:つぶれ・シワを抑えた美しい曲げRで、握ったときに引っ掛かりのない連続した形状を実現
- 板金カバーとの複合構造:フレームは曲げパイプで軽く強く、機能部は板金カバーで覆う。それぞれの加工の長所を組み合わせた設計
- TIG溶接による接合:パイプと板金という厚みの異なる部材同士を、歪みを抑えて確実に接合。人が触れる部分は滑らかに仕上げ
- 溶接焼けの除去まで対応:酸洗・研磨で焼け色を除去し、衛生面と美観を確保(ステンレスの場合は耐食性の回復にも重要)
- 試作1個からの対応:握り心地を確認しながら形状を詰められる
想定される用途例
- 医療機器・検査機器の押し手、持ち運び用ハンドル
- リハビリ機器・訓練機器の支持フレーム、グリップ
- 介護ベッド・入浴介助機器の取っ手、手すり
- 院内搬送カート・ワゴンのハンドルフレーム
- 車いす・歩行補助具まわりのカスタム部品
製作工程
- 設計・図面作成:使用者・使用場面をヒアリングし、パイプ径・曲げR・板金部の形状をCADで確定
- パイプ曲げ加工:ベンダーで曲げ成形。曲げ順序と曲げRの管理でつぶれ・シワを防止
- 板金部の切断・曲げ:レーザー加工機(アマダ製)で切断し、プレスブレーキで成形
- TIG溶接による組立:治具で位置決めし、パイプと板金を歪みを抑えて接合
- 仕上げ:溶接焼けの除去、バリ取り、面取り。必要に応じて塗装・研磨仕上げ
よくあるご質問
Q. 材質は何がおすすめですか?
A. 消毒液での清拭が多い医療・福祉用途では、耐食性に優れるステンレス(SUS304)が第一候補です。コストを抑えたい場合はスチール+塗装、軽さを最優先する場合はアルミもご提案できます。使用環境をお伝えいただければ比較してご案内します。
Q. 曲げの形状はどこまで自由にできますか?
A. パイプ径・肉厚に応じた最小曲げRの範囲内で、複数箇所の曲げや立体的な曲げにも対応します。スケッチや現物からの形状再現もご相談ください。図面化の段階で、加工可能な形状に落とし込んでご提案します。
Q. 溶接部の焼け色はきれいになりますか?
A. はい。写真のような溶接直後の焼け色は、酸洗や研磨で除去して納品します。ステンレスの場合、焼け除去は見た目だけでなく耐食性の回復にも関わるため、医療・福祉用途では標準の仕上げとしておすすめしています。
Q. 試作1個だけでも依頼できますか?
A. 可能です。取っ手は「実際に握ってみないと分からない」部品です。試作で握り心地・高さ・角度を確認してから本製作に進む流れを多くのお客様が選ばれています。
まとめ:取っ手は「人が最初に触れる部品」だから、試作から丁寧に
医療・福祉機器の取っ手フレームは、利用者と介助者が毎日直接触れる部品です。パイプ径・曲げ形状・溶接仕上げの一つひとつが使い心地と安全性に直結します。株式会社オーディーケー(東京都青梅市)は、パイプ曲げ加工と板金加工の両方を社内に持つ強みを活かし、多摩エリアをはじめ首都圏の機器メーカー様の試作〜小ロット製作を支えています。
