
この記事でわかること:芯ずれ(オフセット)をつなぐS字曲げの考え方/レーザー切り板フランジと機械加工フランジの使い分け早見表/曲げ・機械加工・溶接の3工程を1社で完結させるメリット。装置・車両・設備の配管部品の設計や調達に関わる方に向けて、加工現場からまとめました。
今回は、S字(オフセット)曲げのパイプに機械加工の角フランジを溶接した複合部品の製作事例をご紹介します。接続したい2つの口の高さ・位置がずれている——配管ではよくあるこの「芯ずれ」を、1本のパイプの滑らかなS字曲げでつないだ製品です。フランジは板の切り抜きではなく、シール面と位置決め段(インロー)を持つ機械加工品。パイプ曲げ・機械加工・TIG溶接という3つの技術がひとつの部品に集約されています。
「芯ずれ」をつなぐS字曲げの考え方
機器の吐出口と受け側の口が一直線に並ばないとき、エルボを2個組み合わせて段差を作る方法もありますが、溶接箇所が増え、流路も直角に2回折れて圧力損失が大きくなります。1本のパイプを2回の曲げでS字に成形すれば、継ぎ目なし・滑らかな流路のまま芯ずれを吸収できます。曲げ角度を浅く取るほど流れはスムーズになりますが、その分部品は長くなるため、「ずらしたい寸法」と「使えるスペース」の兼ね合いで曲げ角度とRを決めるのが設計の勘所です。
お客様側でこの計算をしていただく必要はありません。「芯ずれ量」「全長の制約」「パイプ径」の3つをお知らせいただければ、当社で曲げ形状に落とし込んでご提案します。
板フランジと機械加工フランジ、どちらを選ぶか
フランジには大きく2つの作り方があります。レーザーで板から切り抜く方法と、今回のように素材から機械加工で削り出す方法です。コストと機能で使い分けます。
| 比較項目 | レーザー切り板フランジ | 機械加工フランジ(本事例) |
|---|---|---|
| シール面の精度 | 板の面精度のまま。ガスケット頼みになる | 面を削り出すため平面度が高く、確実にシールできる |
| 位置決め(インロー) | 付けられない | 段付き加工で相手側にはまり込み、芯出しが容易 |
| 厚み・剛性 | 板厚の範囲内 | 厚肉で締付けに強く、繰り返しの脱着にも耐える |
| コスト | 安価・短納期 | 加工工数分のコスト増 |
| 向くケース | 低圧のダクト・カバー類の接続 | 圧力がかかる配管、シール性・芯出しが必要な接続、脱着頻度が高い箇所 |
「とりあえず全部機械加工フランジ」はコスト過剰、「全部板フランジ」は漏れ・芯ずれのリスク——箇所ごとの適材適所が正解です。図面全体を拝見して、フランジ仕様の見直し提案をすることも可能です。
本事例のポイント
- つぶれ・シワのないS字曲げ:連続する2つの曲げでも断面の真円度を維持し、流路を確保
- 機械加工フランジの一体製作:シール面・インロー段・ボルト穴を機械加工で削り出し。取付先との芯出しと確実なシールを実現
- フランジ取付角度の管理:治具でパイプとフランジの直角度・ボルト穴の位相を管理してTIG溶接。ボルトを締めれば正しい向きに収まる状態で納品
- 3工程を社内で完結:曲げ・機械加工・溶接を1社で行うため、工程間の寸法の受け渡しミスがなく、納期も短縮
- 1個からのリピート対応:曲げデータ・加工プログラムを保管し、補修・増設時も同一品を再現
想定される用途例
- エンジン・発電機まわりの排気管、接続パイプ
- ポンプ・コンプレッサーの吸込・吐出配管
- 装置内で高さ・位置のずれた口をつなぐオフセット配管
- 油圧・冷却水ラインのフランジ接続部品
- 車両・建機の補修用パイプ(現物からの複製)
製作工程
- 設計:芯ずれ量・全長・径から曲げ形状を確定し、フランジの取付面・穴位相を図面化
- パイプ曲げ加工:ベンダーで2箇所を連続曲げ。曲げ間の直線部が短い形状は曲げ順序と金型選定がポイント
- フランジの機械加工:シール面・インロー段・ボルト穴を削り出し
- TIG溶接:治具で角度・位相を拘束して接合。シール面に歪みが及ばないよう入熱を管理
- 仕上げ・検査:溶接焼けの除去、取付面の当たり・寸法検査のうえ納品
よくあるご質問
Q. 図面がなく、「ここからここへつなぎたい」しか決まっていません。
A. それで十分です。芯ずれ量・全長の制約・パイプ径(または流したい流体と流量)をお伝えいただければ、当社で曲げ形状とフランジ仕様を設計してご提案します。設置場所の写真があるとより正確にご提案できます。
Q. 高温の排気に使えますか?
A. 用途・温度に応じてステンレス(SUS304等)や耐熱性を考慮した材質選定でご提案します。使用温度と流体をお知らせください。
Q. フランジだけ、パイプだけの製作も頼めますか?
A. もちろん可能です。ただ、フランジとパイプを別々に手配すると、溶接時の角度・位相の管理が手配側の負担になります。一体でお任せいただくほうが精度・納期・コストの面で有利なケースが多いため、まずは全体をご相談ください。
Q. 壊れた現物と同じものを作れますか?
A. 現物からの採寸・複製に対応しています。腐食・破損した配管部品の作り替えは多くご依頼いただいており、材質のグレードアップのご相談も可能です。
まとめ:曲げ・機械加工・溶接がひとつの工場にある強み
S字曲げパイプ×機械加工フランジのような複合部品は、工程をまたぐ精度の受け渡しが品質を決めます。株式会社オーディーケー(東京都青梅市)は、パイプ曲げ・機械加工・TIG溶接を社内に持つ体制で、設計段階のご相談から1個の試作・補修部品まで、多摩エリアをはじめ首都圏のお客様に対応しています。
