YAGレーザースポット溶接

コラム17. 設計で失敗しないための板金加工用図面の描き方

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板金加工用の図面には、加工内容や製造意図を明確に伝える役割があります。設計者が曖昧な図面を作成してしまうと、現場での解釈違いやミスの原因になり、品質・納期・コストに悪影響を及ぼします。特に板金製作は「切断」「曲げ」「溶接」「仕上げ」など多工程にわたるため、各工程ごとの情報が的確に盛り込まれていなければなりません。

まず基本として、必要な寸法はすべて記載し、「どこを基準に加工するか(基準面・基準点)」を明示することが重要です。加工公差、曲げ位置、溶接箇所、穴位置、表面処理の有無といった項目が抜けていると、現場では判断ができず、加工不可・品質低下・手戻りの原因となります。

図面作成の際は、JIS規格などに準拠したレイアウトをベースとし、部品名、材質、板厚、数量、仕上げ指示、溶接仕様、加工指示などを統一されたフォーマットで記載しましょう。図面内の文字の大きさ、記載位置、寸法補助線などにも配慮し、誰が見ても読み取りやすいレイアウトが求められます。

板金図面で特に重要なのが、「展開図の添付」と「曲げ方向の明示」です。展開図がないと、曲げ前の切断形状が把握できず、展開寸法の計算ミスが発生します。曲げ方向を間違えれば、材料の繊維方向に反してクラックが入るなど致命的な不良につながるため、曲げ方向の矢印指示は必須です。

また、図面上の注記として、「溶接ビードの仕上げ方法」「焼け除去の有無」「仮付け指示」「組立順序」「治具使用の有無」なども必要に応じて記載しましょう。たとえば「表面仕上げ:バフ研磨仕上げ」「溶接焼け除去を実施」など明確に記すことで、現場との認識違いを防げます。

さらに、板金加工用図面は単品図と組立図の両方を準備するのが望ましいです。単品図では部品ごとの加工情報を網羅し、組立図ではどのように接合されるか、取り付け部品の位置関係などを明確にします。組立指示が曖昧なままだと、現場では試行錯誤が必要となり、工数の増大につながります。

図面に盛り込むべき情報が過不足なく整っていれば、加工・組立・検査のすべての工程がスムーズに進み、製品品質と納期の安定化に大きく寄与します。優れた図面とは、図面を見ただけで製造が正確に進行できる「ものづくりの設計図書」であり、製造現場との信頼関係を築くための重要なコミュニケーション手段なのです。