
R曲げは板金加工における成形方法の一つで、意匠性や構造強度の観点から多用されます。しかし、R曲げには専用の金型が必要な場合が多く、設計段階から加工条件と再現性を考慮する必要があります。
まずR曲げに使用される金型は、V曲げとは異なり、対象となる曲げ半径(R)に対応した専用のパンチ・ダイセットが必要です。したがって、図面で「自由なR」を指示した場合、既存金型では対応できず、新規製作が必要になることがあります。これはコスト増や納期延長の要因になります。
次に、R値の最小寸法にも注意が必要です。材料ごとに曲げ可能な最小Rが存在し、それを下回ると割れや皺、寸法不良のリスクが高まります。一般的には板厚(t)の1倍〜2倍以上のRを目安とすることが推奨されます。アルミやハイテン材は割れやすいため、さらに大きめのR設定が安全です。
再現性の観点でもR曲げは難易度が高いです。金型と材料、加工条件(圧力、速度など)の微細な差異によりR寸法がばらつきやすく、寸法公差の設定や形状検査基準を明確にしておくことが重要です。
また、R曲げは意匠性が重視される場合にも多用されますが、仕上がりの一貫性を保つためには、表面処理の順序や冶具の使用も含めた工程設計が必要です。設計段階で「R部に溶接がかかるか」「表面の美観が求められるか」など、製造・仕上げの観点を織り込むことで、加工トラブルを未然に防げます。
最後に、R曲げの設計時は、現場と連携し「保有金型の確認」や「サンプル加工の実施」などを通じて、確実に製造できる形状かを確認することが望ましいです。量産時には再現性と安定性が重要なポイントとなるため、金型選定と形状設計をセットで検討することが理想です。