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コラム5. 曲げ加工に強い設計とは?板金設計で失敗しないためのコツ

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曲げ加工は、板金部品の成形において最も基本的かつ頻度の高い工程の一つです。正確な曲げ加工を行うためには、設計段階からの配慮が不可欠です。特に、材質や板厚、曲げ半径、曲げ方向、最小寸法などを適切に考慮しなければ、仕上がりの精度低下、クラックの発生、形状不良といった問題につながります。

まず基本となるのは「曲げ内R」の設定です。曲げ加工では、内側にR(半径)を設けるのが一般的で、鋭角な曲げは材料破断やひび割れの原因になります。一般的には、内Rを板厚(t)の1倍以上に設定することが推奨されますが、材質や曲げ方法によっては1.5t~2t程度必要な場合もあります。特にアルミニウムは延性が低いため、Rを大きめに設計することでクラックの発生を抑えられます。

次に「曲げ方向と繊維方向」の関係も重要です。金属板は圧延方向に繊維(結晶の流れ)が存在し、この方向に直角な曲げを行うと割れやすくなります。そのため、できる限り繊維方向に沿った曲げ方向を指定することが望ましいです。これにより、加工性と耐久性の両立が図れます。

曲げ加工において注意すべき寸法制限もあります。たとえば、曲げ起点から近すぎる穴や切欠きは、変形やクラックの原因になります。一般的に、穴と曲げラインの距離は板厚の2倍以上を確保することが目安とされています。また、曲げ後の全体寸法を正確に出すには、素材の伸びを考慮した「曲げ伸びしろ」の計算が必要です。設計段階で正確な展開寸法を出すことは、最終製品の精度確保に直結します。

曲げ加工の方法には、エアーベンド、ボトムベンド、コイニングなどがあり、それぞれに特徴と得意な形状があります。一般的にはエアーベンドが多用されますが、ボトムベンドは精度が高く、コイニングは再現性に優れています。設計段階で最終製品の要求精度に応じて、適した加工方法を想定することが重要です。

最後に、設計段階で「量産性」も意識しておくことが望まれます。曲げ回数を減らす、共通金型で対応可能な形状にする、冶具が不要な構造にするなど、現場での効率化に貢献する設計は、コストダウンにも直結します。設計者が加工現場の制約を理解し、曲げ加工に適した設計を行うことで、不良率の低下、生産性の向上、製品品質の安定につながります。