ステンレス板金で筐体と架台を一体製作|複雑構造でも「一社完結」にこだわる理由

「筐体と架台、別々に発注したら合わなかった。」

設備導入の現場でこういった話は、残念ながら珍しくありません。図面上では問題なかったのに、現物を合わせてみたら穴位置がズレていた、架台の水平が出ていなかった、フレームの強度が足りなかった。それぞれの業者に言い訳をされて、どちらの責任かも曖昧なまま、結局追加コストと納期遅延を自分たちで被る羽目になる。

今回ご紹介するのは、そんな「分割発注の悩み」を一気に解消したステンレス板金による筐体・架台・サイドトレイの一体製作事例です。複雑な構造を一社で完結させることで、何が変わるのか。具体的にお伝えします。

この製品、何がすごいのか?構造の複雑さを解説します

今回製作した構造体は、大きく3つのパーツが組み合わさっています。

まず上部の箱型筐体。内部に仕切り壁・開口部・通気スリットが複数設けられており、単純な四角い箱ではありません。パネル開口の位置・寸法・面取りの精度が、内部に実装される機器の取り付けに直結します。

次にサイドトレイ(操作台)。筐体側面に張り出す形で設けられており、作業者が手を置いたり機器を一時置きしたりするための台です。筐体本体との接合強度と、水平精度が問われます。

そして最も構造が複雑なのが架台フレームです。4本柱+横桟の組み合わせで、上部の筐体と操作トレイの重量を支えつつ、設置面との固定にも対応します。柱の垂直精度・溶接強度・床面設置時の水平調整機構まで、求められる精度項目が非常に多い部位です。

これを3社に分けて発注すると何が起きるか。想像してみてください。

参考:一般社団法人 日本機械工業連合会「設備製作における品質管理」 https://www.jmf.or.jp/

分割発注の「見えないリスク」、経験した人はわかる話です

複雑な構造体を複数の業者に分けて発注するとき、最大のリスクは**「誰が全体の整合性を管理するか」が曖昧になること**です。

筐体を作るA社は、自分の担当範囲の寸法精度を守ります。架台を作るB社も、自分の図面通りに作ります。でも、AとBが合わさったとき、締結穴の位置が0.5mmズレていたら?架台の天板水平が0.3度傾いていたら?筐体が架台に乗ったとき、操作トレイの高さが設計値とずれていたら?

それぞれの業者は「自分の仕様は満たしている」と言います。でも現場では使えない。その調整コストと時間は、発注者が丸ごと負担することになります。

これが「分割発注の見えないリスク」です。

図面が複雑であればあるほど、パーツ数が多ければ多いほど、このリスクは指数関数的に高まります。

参考:製造業向け発注支援サービス「Mitsuri」 https://mitsu-ri.net/

一体製作だから実現できた精度と品質:工程を追って解説

今回の製作では、筐体・架台・サイドトレイのすべてを一つの工場で一貫製作しました。その工程と、一体製作ならではのポイントをご説明します。

設計段階での整合確認

まず、3つのパーツを別々の図面で管理するのではなく、組み合わせた状態での3Dモデルを事前に確認しました。干渉チェック・締結部位の整合・重心バランスまで、製作前に問題を潰しておく。これができるのは、一社で全体を把握しているからです。

材料の統一管理

SUS304・板厚2.0mmを全パーツで統一しました。材料ロットを揃えることで、熱膨張係数のばらつきによる組み立て誤差を最小限に抑えています。別々の業者に発注すると、同じ仕様でも材料ロットが異なることがあり、これが微妙な寸法差を生む原因になります。

溶接・組み立ての一貫管理

架台フレームの溶接には、柱の垂直精度を保つための専用治具を製作しました。溶接後の歪みを計測しながら修正し、4本柱の垂直度を±0.5mm以内に収めています。その後、筐体を架台に合わせながら最終調整を行うため、組み立て段階での「合わせ修正」がほぼゼロです。

参考:一般社団法人 溶接学会「構造物溶接の品質管理」 https://www.jwes.or.jp/

表面処理の統一

全パーツをまとめてサンドブラスト処理→防錆処理の工程に通しています。バラバラに発注した場合、表面処理の業者が異なることで色味・質感・光沢のわずかな差が生まれ、組み上げた製品の外観統一感が損なわれます。一体製作ではこのリスクがありません。

こういった構造体を依頼するとき、絶対に確認してほしいこと

複雑な板金構造体を発注する際、業者選びで見るべきポイントをまとめます。

「3D図面での事前確認ができるか」を確認する

2D図面だけで受け付ける業者は、干渉チェックや全体整合の確認が製作後になりがちです。3DCADで事前に合わせ確認ができる業者を選ぶことで、手戻りリスクが大幅に減ります。

「治具製作まで内製できるか」を聞く

架台のような構造物は、溶接時の歪み管理が精度の命です。専用治具を自社製作できる業者は、それだけ精度への意識が高い。治具を外注している業者は、溶接精度の管理が甘くなる傾向があります。

「表面処理まで一貫対応できるか」を確認する

溶接・組み立てはできるが表面処理は外注、という業者は意外と多いです。外注が悪いわけではありませんが、外観品質の最終確認責任が曖昧になりやすい。「うちで最後まで見る」と言い切れる業者に任せたほうが、仕上がりの統一感は上がります。

「納品前の組み立て確認ができるか」を聞く

複雑な構造体は、出荷前に実際に組み上げた状態で寸法・水平・干渉を確認してくれる業者が理想です。「バラして納品するから組み立ては現場で」という業者では、現場でトラブルが起きたときの対応が遅くなります。

参考:ものづくりマッチングサイト「MEKIKI」 https://mekiki.monodukuri.com/

「一社完結」が生み出すもう一つの価値:コミュニケーションコストの削減

精度や品質の話をしてきましたが、実は一体製作の最大のメリットはコミュニケーションコストの削減かもしれません。

複数業者に分けて発注すると、仕様変更が生じたとき全社に連絡が必要です。一社が変更に対応しても、他社が古い図面で製作を進めていたという事故は現場では頻繁に起きます。

一社完結なら、変更連絡は一回。確認も一回。責任の所在も明確です。

「この筐体、少し幅を広げたい」という設計変更が発生したとき、一社に電話一本で済む。それだけで、どれだけ現場の負荷が下がるか。設備担当者なら、この価値の大きさは身に染みてわかるはずです。

まとめ:複雑な板金構造体は「一社完結」に勝る選択肢はない

今回の事例を通じてお伝えしたかったのは、複雑な構造体の製作において**「誰が全体を管理するか」が品質のすべてを決める**ということです。

筐体・架台・トレイをそれぞれ別々に調達する方法は、一見コストが安く見えます。でも、合わせ修正・やり直し・現場調整・納期遅延のトータルコストを考えると、一体製作に任せた方がはるかに効率的で、最終的な品質も高くなります。

「どうせ複雑すぎて一社じゃ無理だろう」と最初から諦めていませんか?まずは相談だけでも、してみてください。「これ全部まとめて対応できます」と言い切れる業者は、必ずいます。


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