板金仕上げ

コラム16. 板金製品の仕上げ加工と外観グレードの基準解説

板金仕上げ

製品の価値やブランドイメージに大きく関わるのが仕上げ処理です。塗装、バフ研磨、ヘアライン仕上げ、電解研磨など、用途に応じて求められる品質は異なります。外観品質を設計段階で明確に定義しておくことは、製造現場との認識齟齬を防ぎ、クレームや再加工のリスクを軽減します。

外観部品では、傷や打痕、バリの有無はもちろん、溶接焼けや仕上がりの一貫性が重視されます。以下のような仕上げランク基準を明記することで、品質のばらつきを防ぐことができます。

  • ・グレードA:外観面。無傷・光沢均一・バフ/ヘアライン仕上げあり。
  • ・グレードB:外周面。多少の擦り傷は許容・焼け除去必要。
  • ・グレードC:内部面。未処理可・焼け、バリ可。

仕上げ方法にはそれぞれコストと手間が発生します。たとえば、バフ研磨は美観に優れる一方で作業時間が長く、量産には不向きです。逆に、塗装仕上げは大量生産に向いていますが、前処理の精度によって品質が左右されるため、表面の平滑性や脱脂処理を含めた設計配慮が必要です。

ステンレス製品では、ヘアラインや電解研磨によって高級感を演出できます。ただし、研磨方向が外観に影響を与えるため、方向の統一指示や面ごとの指定が必要です。溶接焼けに関しても、除去処理の有無・範囲を図面に明記することで、現場での判断を減らすことができます。

また、仕上げ面と非仕上げ面を明確に区別することで、不要な作業を避けられ、コストダウンにもつながります。見えない面は“非外観面”として記載するなど、設計図面での配慮が重要です。

外観品質はユーザーの第一印象を左右し、企業の信用に直結します。設計者は「何を仕上げるべきか」「どの面が重視されるのか」を意識し、基準を設けた上で仕様書や図面に明確に反映させるべきです。仕上げレベルを製造現場に委ねず、設計段階で定義しておくことで、製品品質の安定と顧客満足度の向上が実現できます。