絞り加工

コラム15. 設計で知っておくべき「溶接不可・難加工」な形状とは?

絞り加工

溶接や加工が困難な形状は、設計段階で避けることが重要です。典型的なNG形状には以下のような例があります:

  • ・溶接トーチが届かない隅肉部(狭い隙間、鋭角の内角)
  • ・板同士のギャップが大きすぎる/狭すぎる溶接指示
  • ・熱歪みが発生しやすい長手方向の連続溶接指定
  • ・裏側からのアクセスができない密閉構造での溶接要求
  • ・アルミや薄板材への広範囲溶接指定(焼けや変形の要因)

これらの形状は、現場での作業性を大きく損ない、製品品質の低下や工数の増加、最悪の場合は製作不可となることもあります。

また、設計段階で3Dモデル上は組み立てられても、実際の溶接手順を再現できないケースが多々あります。例えば、部品を全周溶接したいのに、最後の一辺にトーチが入らない構造などが典型です。このような場合は、先に溶接してから組み立てる部品構成への見直しが必要です。

さらに注意すべきは、溶接によって発生する歪みです。平面構造やL字構造に対して長い溶接線を指定すると、加熱・冷却による収縮でフレームやパネルが反る可能性があります。歪みを抑えるには、溶接位置を分散させたり、最小限の溶接量に留める工夫が求められます。

難加工な形状を回避するには、設計段階で「溶接姿勢(上向き/下向き)」「冶具の有無」「溶接順序」などを想定し、実作業をイメージすることが重要です。また、複雑な構造には、分割設計や機械締結とのハイブリッド設計で対応することも選択肢の一つです。

最も効果的なのは、製造現場との情報共有です。設計段階での打ち合わせやレビュー、試作品製作のフィードバックを活かすことで、作業者が溶接しやすく、かつ精度を確保できる構造を目指すことができます。

溶接不良や加工トラブルを未然に防ぐために、設計者は常に「現場で本当に作れるか?」という視点を持って設計に取り組むことが大切です。