
板金筐体は、電子機器や制御盤、医療装置など多くの分野で使用されています。見た目の美しさ、放熱性、構造強度を満たしつつ、組立やメンテナンス性にも配慮した設計が求められます。
基本として押さえるべきは、①組立方向、②取り付け位置の明確化、③加工方法との整合性です。ネジ止め・カシメ・スポット溶接などの接合方法を想定した設計、基板や配線のスペース確保、取り外しやすい構造を盛り込むことが重要です。
チェックリスト例:
- ・内部部品の取り付けが可能なスペースは確保されているか
- ・開口部やファン取付部が加工可能な形状か
- ・側面板の組立順序が妥当か
- ・筐体の剛性は十分か(補強板の検討)
- ・表面処理に支障がある構造はないか
応用設計としては、シールド対策、放熱スリットの追加、部品のモジュール化などがあります。こうした設計は、部品数削減や保守性向上、さらには製造コストの低減にも寄与します。
また、筐体設計では加工性を意識した構造設計も重要です。例えば、深い箱形状では加工や塗装が困難になるため、分割構造を検討することや、組立精度を高めるための位置決め突起・ガイド機構を取り入れると、製造現場の負担が軽減されます。
仕上げについても、外観グレードを明示することが不可欠です。ヘアライン、バフ、塗装などの処理は、製品の印象を左右する要素であり、どの面が外観となるのかを図面で明確に指示する必要があります。
板金筐体の設計は、部品としての役割と製品全体の印象を決める重要なパートです。設計者は単なる箱ではなく、「構造」「機能」「外観」のすべてを両立するための工夫を凝らし、現場と連携しながら最適な形を導き出すことが求められます。