アルミフレーム

コラム3. TIG溶接とCO2溶接の違い|板金設計に活かす溶接知識

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板金加工において溶接は重要な工程の一つです。中でも「TIG溶接」と「CO2溶接」は用途や仕上がりの特性が異なり、設計段階からその使い分けを意識することで、品質・コスト・製造性のバランスを取ることができます。

TIG溶接(タングステン・イナート・ガス溶接)は、不活性ガス(主にアルゴン)を使用し、母材と溶加材をアーク熱で溶かして接合する方式です。特徴はアークが安定しており、外観品質が非常に高く、薄板の溶接にも向いています。主にステンレスやアルミ、チタンなど、仕上がり重視の製品に使われることが多く、微細で精度の高い溶接ビードが得られます。ただし、溶接速度が遅く、工数がかかるため、大量生産には向いていません。

一方、CO2溶接(半自動溶接、MAG溶接)は、炭酸ガスまたは混合ガスをシールドガスとし、連続的に供給されるワイヤで溶接を行います。スパッタが発生しやすいものの、溶接速度が速く、作業者の習熟度に関係なく安定した溶接ができるため、構造物や量産品に多用されます。鉄やSS400などの一般鋼に多く使用され、TIGに比べてコストパフォーマンスに優れます。

設計者がこれらの溶接特性を理解し、どの部位にどの溶接法を使うかを考慮することで、無駄な工程や品質トラブルを防止できます。例えば外観を重視するカバーや筐体にはTIG溶接、内部の補強部材やフレームにはCO2溶接といった使い分けが有効です。

また、溶接の設計では「歪み」「溶接順序」「熱影響範囲」なども重要なファクターです。溶接による変形を最小限に抑えるためには、溶接長の短縮や点付け位置の設計、適切な溶接姿勢を考慮した構造設計が必要です。溶接冶具の使用可否や作業空間も含めて、製造現場との協力が求められます。

設計者が溶接に関する基礎知識を持つことで、精度の高い図面作成が可能となり、製品品質の安定やコストダウンにも大きく寄与します。