
外観が重視される製品において、溶接ビード(溶接痕)の処理は製品品質に直結します。設計者は、溶接構造とその仕上がりを理解し、製造現場との間で品質の基準を明確にする必要があります。
TIG溶接では、ビードは比較的美しく仕上がるものの、それでも「溶接ビードを残す」「平滑に仕上げる(研磨)」「完全に消す(研削+バフ)」など、外観品質に関する要求は設計で明確にする必要があります。設計図にその旨を記載しないと、現場判断に依存し、仕上がりにばらつきが生じやすくなります。
一方、CO2溶接やスポット溶接では、スパッタや焦げ、ビードの段差が生じやすいため、見える面での使用は極力避けるか、仕上げ加工を前提に設計する必要があります。これらの後処理(グラインダー、バフ、電解研磨など)は工数・コストに直結するため、外観重視の設計には十分な配慮が必要です。
また、溶接部に近い箇所の板金が変色する「焼け」も外観上の問題になります。特にステンレスでは顕著で、焼け除去には電解研磨や酸洗いなどの処理が必要です。設計段階で「どの面が見えるか」「どの程度の仕上げが求められるか」を明記し、仕上げレベルのばらつきを防ぐことが重要です。
溶接仕上げの基準化には、社内基準書の整備やチェックリストの活用が効果的です。製品ごとに「この部位はビードを見せてよい」「この面は仕上げが必要」といった基準を共有することで、製造と設計のギャップを解消できます。
設計と外観品質の整合性を取ることは、見た目の問題だけでなく、顧客満足度、再加工防止、納期順守にもつながります。図面で明確に、製品仕様で確実に伝える設計力が問われます。